「離婚したいけど、専業主婦では経済的に、子供の親権を持つことは難しいのではないか?」と思っている方も多いかと思います。確かに子供を育てていくにはお金が必要ですが、親権を持つためにはそれほど重要なことではありません。
シングルマザーでも、母子家庭への住宅手当や、医療費を助成する制度、そして本当に困った場合には生活保護の制度もありますので、現代の日本で「困窮して暮らしていけない」なんてことはありません。
この記事では、専業主婦が親権を取るためのポイントと、離婚の不安要素を解決する方法をまとめました。
目次
専業主婦が離婚を躊躇する不安要素について
専業主婦が離婚を考えた場合、子供のことやお金のことなど、さまざまな不安が頭をよぎり、「なかなか離婚へ踏み切れない」という方も多いかと思います。
専業主婦に離婚を躊躇させる不安要素は、主に次の通りです。
・収入がないから、親権を取れないのではないか?
・生活費を自分で確保できるのか?
・小さい子供がいたら仕事に就けないのではないか?
・シングルマザーで子育てしていけるのか?
しかし、これらの不安要素は、離婚時に決める条件やシングルマザーのための助成金や制度などによって解決することが可能です。
収入は重要ではない!離婚後の親権者の8割は母親
専業主婦であることや収入、社会的地位などは、親権者を決定する場合において重要なことではありません。たしかに、収入はあるに越したことはありませんが、子供の年齢が低いほど、離婚後の親権者は母親であることがほとんどです。
親権を取得するための基準
話し合いで話がまとまれば、それに越したことはないですが、もし話し合いで決着が着かない場合には家庭裁判所にて離婚調停を行います。調停となった場合に親権者を決定するための基準は、次の通りです。
・どちらが 子供に対する愛情がより大きいか
・健康、精神状態に問題がないこと
・子供の年齢
・子供の意思(15歳以上)
・育児への時間を十分にとる事ができるか
・経済的な余裕があるか
どちらがより主体的に子供の世話をしてきたか
離婚後の親権者を決める際に最も重視されるのが、「どちらがより主体的に子供の世話をしてきたか?」ということです。家庭裁判所としては、離婚後も離婚前とできるだけ環境を変えずに生活できることが望ましいと考えているので、これまでどちらが主に子供の世話をしていたのかが重要視されるのです。
どちらが子供に対する愛情がより大きいか
子供に対する愛情の大きさを裁判所が客観的に判断し、「より大きい」とされた親が親権者とされる場合もあります。両者とも親権を望んでいる時点で、子供への愛情があることはわかりますが、この場合では「子供と一緒にどれだけ長い時間過ごしているか」が客観的に愛情の大きさを量る基準だとされています。
健康、精神状態に問題がないこと
健康状態や精神状態に問題があったり、性格に大きな問題がある場合は、親権の取得が難しくなる可能性があります。親権を取得するためには、健康状態が良くて精神的にも問題がないことをアピールしましょう。
子供の年齢
子供の年齢は幼いほど、母親が親権者になるケースが多いです。特に、乳児や乳幼児の場合は母親が親権を持つことが妥当だと考えられています。
子供の気持ち
子供がある程度大きい場合は、子供の意思も尊重されます。家庭裁判所の調査官が子供の気持ちを調査して、その結果が親権者を決定する際に重視されるのです。また、15歳以上である場合には家庭裁判所で子供の考えを聞く機会もあり、その際も子供の意思が尊重されます。
育児への時間を十分にとる事ができるか
離婚後、子供と一緒に過ごす時間を長くとることができるかどうかも、親権者を決定する際の判断材料になります。自分の両親や親戚などが子供の面倒を見るのではなく、親がどれだけ子供と一緒の時間を過ごすことができるのか、という点がポイントです。
経済的な余裕があるか
最重要視される問題ではありませんが、子供を育てていけるだけの経済力があるかどうかも、親権を得るために必要な条件です。とは言っても、相手から養育費を受け取れたり、シングルマザーが受けることができる制度もありますので、経済的な余裕があるかどうかは決定的な理由にはなりません。
母親が親権を取得できないのはこんな場合
特に子供がまだ幼い場合、そのほとんどのケースで母親が親権を取得していますが、親権を望んでもさまざまな理由から母親であっても親権を取得できない場合もあります。
子供を健全に養育できない懸念がある
例えば、子供に対して過剰な暴力を振るったり、食事を十分に与えないなど、子供を健全に養育することができない要素がある場合には、当然親権者として認められることはありません。
犯罪の常習性がある
単に前科があるというだけでは、親権者を選択する上でそれほど重視されません。しかし、例えば、薬物依存や窃盗などを常習的に行っている場合だと親権者にふさわしくないとされる可能性が高くなります。
専業主婦が離婚に向けて準備しておくこと
離婚後の仕事を決めておく
まずは、何と言っても離婚後の仕事を探す必要があります。
「小さい子供がいるから、採用してもらえないのでは?」「ブランクがあるから心配」などの不安もあるかもしれませんが、初めから正社員を目指さなくても契約社員や派遣社員といった選択肢もありますし、実際に非正規雇用でお仕事をしているシングルマザーもたくさんいます。
また、仕事探しの際には「マザーズハローワーク」や「マザーズコーナー」を利用することもおすすめです。これらは、一言で言うと「ママ向け」のハローワークです。
一般的なハローワークと求人の内容は同じですが、その中から子育て中のママにとって条件の良い求人を紹介してくれたり、履歴書の書き方や面接に関する相談もできます。
また、マザーズハローワークにはオムツ替えができる場所や子供の遊び場などもあり、ママにも子供にも優しい施設です。
子供の預け先を決めておく
未就学児の場合は、仕事している間の預け先を確保する必要があります。
実家や保育園など、安心して預けられる先を決めておきましょう。
離婚後の住まいを決めておく
現在暮らしている家にそのまま住み続けるのか(夫が出ていくパターン)、それとも自分の実家に帰るのであれば心配ないですが、そうでない場合には離婚後の住まいを決めておく必要もあります。
離婚後、賃貸のアパートやマンションに住むのであれば、ひとり親家庭に手厚い地域を選ぶことをおすすめします。自治体によっては、ひとり親家庭に対して5,000円~15,000円程度の家賃補助を行っているところもあります。
また、家賃が安い公営住宅も選択肢の一つです。例えば、月収が14万円程度の場合、地域によっては1万円~2万円台で住むことも可能なのです。その分、入居するには抽選があったり、物件自体がかなり古いこともあります。
離婚後にかかる生活費を試算しておく
離婚後にかかる生活費をあらかじめ試算し、確認しておきましょう。
自分で働いて稼ぐお金や夫から受け取る養育費の金額から、家賃や食費、光熱費などの支出がどのくらいかかるのかを試算しておき、収入が支出を上回るように生活していく計画をたてましょう。
シングルマザーのための制度を知っておく
児童手当
児童手当は、全ての家庭を対象としている手当なので、すでに受け取っている方がほとんどだと思います。児童手当は、0歳~中学校卒業の年度末まで受け取ることができ、年間3回に分けて指定した口座に振り込まれます。
児童手当の振込先口座が夫のものである場合には、離婚する際に忘れずに変更しましょう。
児童扶養手当
児童扶養手当は、母子家庭や父子家庭を対象としたもので、0歳~18歳に到達して最初の3月31日までの年齢の子供が対象となっています。支給される金額は扶養人数や所得によって異なり、それによって「全額支給」「一部支給」「不支給」の3つに分類されます。
例えば、子供が1人で全額支給に該当する場合には、月額42,000円受け取れます。
母子家庭への住宅手当
先ほども触れたように、地域の自治体によっては母子家庭への住宅手当も実施されています。いずれの地域でも対象となるのは、母子家庭で20歳未満の子供を養育していて、月額10,000円を超える家賃を支払っていることが条件です。
母子家庭の医療費助成制度
世帯の保護者や子供が病院で受診した際の健康保険自己負担分を、居住している市区町村が助成する制度です。対象とされているのは、母子家庭・父子家庭で、0歳~18歳に到達して最初の3月31日までの間の年齢の子供です。
この助成内容は市区町村によって異なっているので、離婚後に居住する予定の制度を確認しておきましょう。
ただし、この制度には所得制限があり、一定の所得を超えているばあには受けることができません。
こども医療助成費
「こども医療助成費」とは、その名の通り子供に対する医療費助成の制度です。
上記の「母子家庭の医療費助成制度」には所得条件があるので、該当しない家庭もあるかと思いますが、こちらの制度には該当する可能性があります。
支給対象の年齢や金額などは市区町村によって異なりますので、離婚後に居住する予定の役所にて確認しましょう。
児童育成手当
児童育成手当は、子供一人につき月額13,500円が支給される制度で、18歳までの子供を扶養する母子家庭が対象です。児童手当と同じく、年3回に分けて指定した銀行口座に振り込まれます。
ただし、市町村によって受給できる条件が異なりますので、こちらに関しても役所にて確認する必要があります。
離婚の条件を決めておくことも必要
離婚する際は、親権はもちろん離婚の条件も決める必要があります。
養育費
離婚後の親権を得ることができたら、相手から受け取る養育費について考えなければなりません。養育費は、「毎月いくら」という形で、一定の期日に振込みにて受け取るケースが一般的です。金額に関しては、話し合いで自由に決めることも可能ですが、ほとんどの場合は家庭裁判所が作成した「養育費算定表」をもとに決定します。
面会交流
相手に暴力などの心配がない限り、定期的に子供との面会の機会を設けなければなりません。その都度連絡を取って相談する形でもいいのですが、離婚した相手とはなるべく連絡を取りたくないものですので、離婚の際に面会の頻度や場所、時間などを決めておくことをおすすめします。
財産分与
結婚してからこれまでに貯めた貯金や購入した家、家具や家電などを、離婚するタイミングでそれぞれの資産として分けることができます。
その際に見落としがちなのが、「年金分割」です。年金分割とは、夫婦それぞれが支払った厚生年金保険料を一定の割合で分割する制度です。
専業主婦の場合は、夫が払った厚生年金保険料の一部を妻が払ったものとされて、将来の年金額が計算されるのです。
慰謝料
次のような場合は、離婚時に慰謝料として請求することも可能です。慰謝料の相場は200万円が妥当だと言われていますが、実際の幅は50万円~300万円とされています。
・DV(家庭内暴力)を受けた
・夫が拒否することによるセックスレス
・夫が生活費を渡さない
・夫からモラハラを受けた
・理由なく夫から同居を拒否された
離婚を決意したら行うこと
子供を連れて別居する
離婚を本気で決断したら、まずは子供を連れて別居することをおすすめします。
別居しても、安定して子供を育てることができることを証明すれば、離婚調停となった場合でも親権を取得するために説得する材料になります。
また、離婚を切り出しても相手が離婚に同意しない場合、別居期間が長ければ長いほど、調停の際にこちら側が有利になります。
話し合いでまとまったら公正証書を作成しましょう
もし、離婚に際する条件が全て話し合いでまとまったのであれば、公正証書を作成しましょう。口約束では、後々「言った、言わない」の争いになりかねませんが、公正証書を作成しておくことでそのような事態を防止できます。
また、養育費の取り逃しを防止することにも有効です。もし、養育費が未払いとなった場合でも、公正証書に記載しておけば、相手の給与や貯金から養育費を強制的に差し押さえすることができるのです。
ちなみに、公正証書は、公正役場にて作成することができますので、あらかじめ電話で内容を伝えて、日時を予約しておきましょう。
話し合いがまとまらなければ離婚調停を申立て
離婚における条件がまとまらない、そもそも離婚の話が進まない、という場合には、離婚調停を家庭裁判所に申し立てましょう。
裁判と違って調停は「話し合いの場」ですので、申立ての費用は数千円で可能で、弁護士への依頼は不要なことがほとんどです。
親権の「身上監護権」のみ取得も可能
そもそも、親権には「身上監護権」と「財産管理権」という2つの権利があり、離婚後の父親と母親がそれぞれ1つずつ持つことも可能です。
身上監護権とは、子供と一緒に生活して身の回りの世話や教育を行う権利・義務のことを言います。
財産管理権とは、子供名義の財産の管理権や、子供が法律行為を行う場合の同意権のことを指します。例えば、子供がアルバイトを行う際に、財産管理権を持つ親の同意が必要となるというわけです。
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